檜原村空き家課題 現地視察研修の考察
- aposmile
- 7月8日
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2025年7月5日・6日、全国空き家アドバイザー協議会東京支部の現地視察研修に参加し、東京都の檜原村を訪れました。
◆ 檜原村の概要
檜原村は、東京都で唯一の“村”(島嶼部を除く)であり、約80%が秩父多摩甲斐国立公園に、98%が森林に覆われています。平地は限られており、村内には檜原街道と秋川が通り抜けています。
特産品はこんにゃく、ジャガイモ、山菜、ジビエなど。林業や砕石業が主な産業で、かつては養蚕も盛んであったことから、古民家にはお蚕さんのための中二階や三階構造が残るものもあります。
◆ 人口と空き家の現状
檜原村の公式ホームページによると、令和7年(2025年)時点での人口は1,923人、世帯数は1,105世帯。5年前に比べて人口は215人(約10%)減少しており、過去30年での減少率は48.80%にのぼります。世帯数も11.95%減少しており、過疎化・消滅可能性都市に向かっている状況です。
◆ 平成29年実施 空き家調査結果(出典:空き家対策計画 PDF)
▶ 空き家の数と管理状況
空き家数:296軒
管理されている空き家:191軒
居住または別荘利用:13軒
管理不全の空き家:71軒
特定空き家に近い空き家:21軒
◆ アンケート調査結果(抜粋)
【建物の利用状況】(単一回答)
常時住んでいる:14軒(10%)
賃貸している:6軒(4%)
時々利用している:43軒(30%)
物置として利用:15軒(10%)
空き家である:50軒(34%)
その他:16軒(11%)
回答なし:2軒(1%)
【建物の今後の活用について困っていること】(複数回答)
リフォームしないと使えない:40件
どのようにすればよいかわからない:34件
先祖代々の家で判断できない:31件
荷物・仏壇の処分に困っている:26件
解体費用の負担が困難:22件
他人には貸したくない(愛着がある):20件
賃貸しても住みつかれるのが不安:12件
賃貸・売却によって周囲に迷惑がかかる:9件
田畑・山林があり売却しにくい:22件
その他:22件
【今後の活用意向】(複数回答)
今後は自分または家族が管理:35件
別荘などとして時々利用:17件
村が賃貸するなら貸しても良い:21件
売却したい・売却しても良い:21件
村の施設として使ってほしい:14件
地域住民に活用してほしい:7件
NPOや観光協会に活用してほしい:6件
賃貸したい・賃貸しても良い:16件
子や孫に任せる(相続):12件
解体したい:17件
特に考えない(現状のまま):21件
その他:14件
【家屋の提供に関する考え方】(単一回答)
無償貸与:2件
維持費相当額での低価格賃貸:11件
市場価格での賃貸:11件
その他:9件
【貸出にあたっての条件】(複数回答)
現状のままでよければ貸せる:8件
補修を借主が行うなら貸せる:16件
補助金等が使えれば貸せる:16件
家財を残したままでも良いなら貸せる:6件
期間限定(夏季・冬季など)なら貸せる:4件
【管理・活用に関する要望】(複数回答)
貸す・売る際の相手の情報が欲しい:24件
活用方法についてアドバイスが欲しい:27件
修繕・改修の補助が欲しい:32件
解体費用の補助が欲しい:26件
その他:10件
※筆者個人としては、前向きな回答が想定より多く、今後の活用の可能性を感じました。
◆ 現在の対応状況と課題
令和5年12月12日に公表された「檜原村空き家等管理活用支援法人の指定について」では、村の方針が定まるまで、
申請に関する必要事項は定めない
支援法人の指定も行わない
とされており、現時点では具体的な活用体制は整っていません。


◆ ヒアリングからの所感
現地でのヒアリングでは、土地所有者の名義が未整理である、相続登記がなされていない、権利関係が不明瞭なまま利用されているといった声もありました。空き家問題に直結しているかは不明ですが、放置の背景として重要な要素と考えられます。
また、地域交流施設「Vilage Hinohara」では、移住促進・関係人口創出の観点から、興味深い取り組みが行われていました。

【Vilage Hinohara】
◆ 考察
檜原村も全国の多くの地方と同様、少子高齢化・人口減少・経済の停滞・求人の減少・物価高といった社会的課題を抱えており、将来に対する不安が広がっています。
アンケート結果にも表れていたように、
「誰かに貸したいが、手間や不安がある」
「処分や修繕に踏み切れない」
という意識が根強く、「まずリフォームして貸す」といった積極的行動には至っていません。
しかし、村が存続していくためには、移住者や関係人口を受け入れ、空き家を活用する仕組みが不可欠です。そのためには、空き家所有者と行政の橋渡し役としての「空き家等管理活用支援法人」の存在がますます重要になると強く感じました。
放置が進み、取り返しがつかなくなる前に、支援法人が機能する体制を早期に整備していくことが急務です。


